個人留学体験記

田中 智萌さん

フランス・パリ・2022夏

語学研修レポート

田中智萌 (法文 人社 グローバル)4回生

私が初めてフランス語に触れたのは高校2年生の時である。当時、外国語系コースの高校に通っており、10日間のカナダへの修学旅行があった。偶然にも、私のホストファミリーはフランス国籍の家庭であり、私自身との会話は英語であったものの、日常会話の2分の1はフランス語で会話されていた。高校生ながら、言語の多様性に気が付かされた体験である。

そこから2年が経過し、大学1年生時の必修第2外国語では、迷わずフランス語を選択したわけである。私自身、フランス語が得意であるかといわれると、そのようなわけではない。しかしながら、フランス文化や芸術、国民性について知っていくうちに、フランスを実際に感じてみたいという思いが強まった。

当時1年生であった時、私自身が3回生になったタイミングで、大学が斡旋しているフランス圏への研修に参加しようと考えていた。しかしながら、我々を悩ましたのがコロナウイルスである。挑戦する機会が奪われる中で、勉強へのモチベーションを維持するために、就職活動時を除く大学4年間のフランス語コミュニケーションの授業を受講した。継続したかいがあってか、4年生の9月に個人ではあるものの約2週間のフランス語学留学を決行することができた。

日仏文化協会の斡旋での語学留学は、午前中にユーロセンターパリへの語学研修、午後からは自由時間、夕方からはホストファミリーとの時間を過ごすというスケジュールであった。ユーロセンターパリは、セーヌ川より南のパリ中心部にある語学学校であり、家から25分メトロを使って登校した。月曜から金曜までは、朝の8時半から45分×4クラスのフランス語の授業を行った。A1からC1までレベル分けがされており、日本人はほとんどいない。クラスも日本人は私だけで、他の生徒はスペイン人、パラグアイ人、ブラジル人、イタリア人、スイス人、韓国人の方がいた。クラスメイトとフランス語ないしは英語を使用して、休憩時間や放課後にコミュニケーションをすることは刺激的だった。言葉が上手く伝わらず、困惑することもあったが、それでもトライし続ける姿勢を持つことで意思疎通ができる場面が多くあり、これからのコミュニケーションを前向きにする自信にも繋がった。

放課後はパリ市内ということもあり、多くの美術館や教会、国営施設など、フランスと言えばという観光地へ赴いた。私自身、学芸員の資格も取得していたため、世界の博物館施設に行くことは夢であった。フランスでは、若者に優しく26歳未満であれば、無料もしくは学生料金のような形で入場することが出来た。ユーロセンターでは学生証を発行することができたため、ルーブルやオルセー美術館、ベルサイユ宮殿など多くの観光施設へお手軽な値段で行くことができた。その際、店員さんとのフランス語でのやり取りは、日常会話でスピード感も早く、もっと勉強しなければという気持ちにもなった。楽しく、苦戦しながらも、フランスの文化を肌で感じることができた。また、人に恵まれていたこともあり、放課後や週末は語学学校の友達にパリ市内を案内してもらったり、一緒に観光したりしながらフランスを堪能した。偶然にもヨーロッパ文化遺産の日と重なっており、教会でオーケストラ演奏が行われていたり、普段開いていない場所に入ることができたりもした。見るもの全てが、新鮮で洗練されていて、本当にアートが好きな国であると感じた。私自身も心が豊かになった。

また、2週目の週末2日間にはコルマールへ移動し、同じフランス語を履修していた愛媛大学の友達と観光を行った。国境はドイツに近く、美女と野獣やハウルの動く城の舞台となった街であり、パリとは違ったかわいらしい世界観に、またも心が動かされた。長い電車移動の際は、これから観光する場所について調べていくことをおすすめする。なぜならば、実際に現地へ赴いてみることで、ただ"きれいだな~"と思うのではなく、当時の色んな立場の人の思っていたことや、現地の方はどのような気持ちで暮らしているのかなど感じることができたからだ。

さらにホームステイ先では、フランスでの日常生活の在り方や結婚観の違いに触れることができ、物事の考え方に対する多様性を学ぶ良い機会となった。ホストマザーと、たまにホストファザーが遊びに来るような家庭であり、2人ともお話が大好きであった。お互いの家族や自分の好きなこと、日本とフランスの違いなどについて話す時間はとても有意義であった。また、朝夜ごはんはビーガンであるホストマザーのフランス料理を頂いた。私自身も普段は野菜中心の料理をしているため、カルチャーショックも特になく、これから先の人生でフランスの家庭料理を食べる機会は無いため、毎日の夕食が楽しみであった。

今回の研修は約2週間という滞在であり、自分の成長に繋がったと考える。それは、初めて訪れる場所、初めて出会う人、初めてする経験から、これからどんな自分になっていきたいか、何を大切にしていきたいかを、大袈裟ではあるが明確にすることができたからだ。もちろん大変なこともたくさんあった。シャワーヘッドを壊してしまったり、携帯が使えなかったりなどなど..,しかしながら、これらの経験を含めても、"楽しかった"の一言に限る。正直、まだまだフランスにいたいと思えるようなあっという間の2週間であり、本当に充実していたと感じる。また恵まれたことに、フランスの生活では、多くの人に親切にしてもらった。だから、まずはどんな方に対しても"ナイスな人"である言動を心がけたいと思う。そして最後になるが、この研修の経験は財産だと思っている。ただ心に残すのではなく磨き上げて、これからの勉学や生活に活かしていこうと思う。